安全教育学研究
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災害復興教育プログラムと学習指導案の開発
― 石巻市立鹿妻小学校での「復興マップづくり」の実践をふまえて ―
桜井 愛子佐藤 健村山 良之徳山 英理子
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2014 年 14 巻 1 号 p. 63-72

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抄録
本稿は、災害復興教育プログラムのひとつとして、筆者等が実践に取り組む石巻市立鹿妻小学校での「復興マップづくり」について、学習指導案の開発経緯とその内容を中心に論じ、災害復興教育プログラムの方向性を明らかにしていくことを試みた。
本稿での議論を通じて、「復興マップづくり」の特長が示された。その特長は、第一に地域性(自然環境、社会環境、災害による被害状況)を考慮した教育プログラムであること、第二に基本構成にまち歩きとマップづくりワークショップの手法が取り入れられ、小学4年生の総合的な学習の時間を用いて実践されていること、第三に防災研究者と学校教員、教育実践の支援者との協働によって、子どもの発達段階や単元の目標を意識して構成された学習指導案が開発されたことである。
「復興マップづくり」のこれら3点の特長により、学校と学校以外の関係機関との有機的な連携に基づいたフレームワークの構築が行われ、持続可能な災害復興教育プログラムとして実施される可能性が広がったと言えよう。
また、鹿妻小学校での「復興マップづくり」は、津波によって大きな被害を受け、それとともに人口も流出し、町内会等の再建が困難である等の地域の状況や子どもたちの心のケアにきめ細かく配慮した内容となった。「自分の命を自分で守る」こと以上に、被災の経験に向き合い、地域に積極的に関わりを持つことを優先課題とし、地域の一員としての誇りと愛情をもつことによって、地域の未来を考えることに重きを置いて設計された。さらに、震災の体験をポジティブにとらえられるよう、まち歩きでの発見ポイントの分類等で工夫を図り、これらは学習指導案の中に明記された。
「復興マップづくり」の実践から、子どもたちと地域の大人との間に新しいつながりが醸成されていることが示された。災害復興期における復興マップづくりの実践が、震災によって被害を受けた地域と学校との連携を進める一助となることが期待される。そのためには、「復興マップづくり」の実践の継続と、地域の復興の進展や子どもたちの心のケアに配慮しながら、さらに改良していくことが求められている。
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