抄録
近年、地震等による災害発生時の危機対応として児童生徒を保護者へ引き渡す訓練を実施する学校が増えている。本研究は、児童の安全確保に向けて、引き渡し時に困難が予想される大規模小学校において、引き渡し訓練を通して、その現状と課題を把握することを目的とする。調査では、小学校2校の教職員10人に、訓練実施計画及び訓練の現状と課題についてインタビュー調査を行った。また、同意が得られた1校の保護者300人を対象に、訓練に関する意見、感想について自由記述式質問紙調査を実施した。さらに、結果から主要な課題を抽出した。
その結果、引き渡し訓練は年間1回の位置付けであること、学校により保護者への事前通知、保護者の確認方法、引き渡し場所等に違いがあること等が示された。また、課題については、教員は、訓練当日の課題のみならず、悪天候、負傷者発生、保護者の迎えの遅れ、引き渡し場所の変更、引き渡し時間の延長等の懸念を挙げた。一方保護者は、引き渡し訓練における全体の混雑、他の保護者の動向、標示等を指摘した。今後は、引き渡し訓練に対する家庭と学校の共通理解、さらには地域とも協働した訓練が望まれる。