安全教育学研究
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児童の危険回避行動に関わる認知過程の予備的研究
― 小学3年生を対象とした社会的情報処理過程に基づく調査から ―
畠山 美穂
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2019 年 18 巻 2 号 p. 19-28

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抄録
本研究の目的は、小学3年生の危険回避行動に関わる社会的情報処理過程を明らかにすることである。調査では、社会的情報処理に基づく質問紙を作成し、小学3年生(59名)を対象に「知っている人(既知人物)」や「知らない人(未知人物)」に誘われる場合と、自分の欲求と誘ってきた相手の欲求の方向性が「一致する場合」と「一致しない場合」について、社会的情報処理過程を検討した。その結果、未知人物の意図は敵意(嘘を言って誘拐しようとしている等)によるものと解釈しやすい一方で、既知人物に誘われる場面においては、相手の意図を敵意によると解釈した児童の人数と、親切によると解釈した児童の人数に違いは見られなかった。さらに、自分の欲求と相手の欲求が一致しているかどうかにかかわらず、相手の意図を敵意と解釈することが示された。また、多くの児童が、「未知・既知」条件、あるいは「一致・不一致」条件のいずれにおいても回避行動をとると回答していたが、3ケースで「ついて行く」という回答もみられた。このケースに関しては、全て相手の意図を好意的に解釈していたことから、相手の意図の解釈が危険回避行動と関係する可能性があることが示唆された。
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