本研究の目的は、学校危機における安全教育の担い手である援助職(指導主事、スクールカウンセラー(以下、SC)、スクールソーシャルワーカー(以下、SSW))が行う緊急支援の内容(三者共通の支援内容、それぞれの支援内容や役割分担)について明らかにすることを目的とする。学校における安全教育と危機管理を一体的に行うのはチーム学校である。チーム学校の意味は学校の中のチーム(校長、教職員、専門スタッフなど)の連携と、学校・家庭・地域の三者の連携を意味している。今回は緊急支援ではあるが、チームというときには外から来る緊急支援チームの支援者、つまり外から来る指導主事、SC、SSWに焦点を当てて調査を行った。
調査はA市の緊急支援の研修を受講した129人の援助職(指導主事、SC、SSW)に対して質問紙調査を実施した。調査内容は職種や学校危機における緊急支援の経験回数、緊急支援で行ってきた支援内容と行った支援内容が効果的であったかどうかについてであった。そして緊急支援の経験がある指導主事10名、SC49名、SSW12名の回答を分析対象とした。その結果、緊急支援における指導主事、SC、SSWの役割や支援内容の特徴や緊急支援の基盤となる支援内容が明らかになった。指導主事の主たる役割はコーディネーション、SCは心理教育、SSWは環境への働きかけであることが示された。緊急支援における基盤となる支援は、学校危機に関する情報の収集と共有を通したアセスメントや心身の健康や安全の配慮を要する児童生徒の把握を行い、それを教師へのコンサルテーションに役立てるという一連の流れであることが明らかになった。そして、緊急支援における支援内容の特徴や基盤となる支援内容に基づいて研修プログラムを開発していくことが学校に対する安全教育を促進すると考える。さいごに本研究の結果と考察に基づいて学校安全に関わる緊急支援における研修プログラムを提案した。
また、本研究では3職種が今後、外部と学校内部の緊急支援チームが連携を行うためにも学校現場向けの緊急支援研修プログラムの開発などが今後の課題となった。
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