安全教育学研究
Online ISSN : 2186-5442
Print ISSN : 1346-5171
ISSN-L : 1346-5171
学校安全点検に関する児童生徒の意識,認知,経験及び相互の関連性
水野 安伸西岡 伸紀村上 佳司柴田 真裕
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 23 巻 2 号 p. 3-13

詳細
抄録
本研究は、学校安全点検のプロセスを小・中学校の児童生徒が効果的に学習するためのプログラムを開発することを最終目的とした。そのために短期的には、児童生徒の安全点検に関する意識及び安全点検の参加状況等を明らかにし、その結果を踏まえて教育内容や指導方法を検討することを目的とした。 「教員による安全点検の実施の認知」「安全点検に関する意識及び参加状況等」に関する児童生徒の実態を明らかにするため、5都道府県の小学5、6年生児童210名、5府県の中学生268名を対象とし、小中学生にアンケート調査を行った。 その結果、安全点検に参加したことのある児童生徒の割合は、小学生41.0%、中学生47.8%だった。また、小学生57.6%、中学生48.9%が校内における危険を発見した経験を有していたが、危険発見時の連絡先では、誰にも連絡しなかったとの回答が、30~40%程度あった。 また、教員等による安全点検を目撃したことのある児童生徒はいずれの校種も80%を超えた。 安全点検に対する参加の意思、関心、自分で行う点検の必要性、適切な点検実施の自信については、いずれの校種も肯定的回答が70~90%を占め、参加や実施に対して肯定的であった。 学校での安全マップづくりの経験は、地域や家庭への活用や安全点検への自信や関心など、ほとんどの項目間に有意な関連が見られなかった。一方、安全点検に参加経験が有る児童生徒は、経験が無い児童生徒よりも、校内における危険を発見した経験の割合が約30%高かった。 本研究から、児童生徒は日常的に校内の危険箇所を発見しており、それには教員が気づくことのできないような箇所も含まれる可能性があること、児童生徒が主体となって安全点検を行うことにも肯定的であること、また安全点検への参加がその後の危険発見にも有効であることが明らかとなった。したがって、今後開発される学習プログラムは、児童生徒が安全点検に参加したいと思えるものであり、かつ、学校での安全管理の学習が地域や家庭でも活かされる必要がある。
著者関連情報
次の記事
feedback
Top