社会・経済システム
Online ISSN : 2432-6550
Print ISSN : 0913-5472
構築主義的社会経済システム論の構想
出口 弘
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2019 年 38 巻 p. 81-92

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抄録

 本稿でわれわれは「構築主義的社会システム論」の概念を導入する。伝統的なシステムアプローチが人間活動システムの機能的な側面に焦点をあてるのに対して、構築主義は人間活動システムにおいて共有される現実構築過程を扱う。われわれは「現実」の概念を社会において共有された内部モデルとして扱う。そしてわれわれは「現実の構築」の概念が社会的、文化的、組織的そして経済的システムを、歴史的に構築されたものとして探求するための鍵となることを示す。社会的に構築された現実に関する社会科学は普遍的法則の科学でも、ただひとつだけ再構成される現実に到達するための合理的過程を帰納する科学でもない。構築主義的社会システム論においてわれわれは、構築主義的アプローチと機能主義的アプローチの橋渡しを試みる。そのために、われわれは既存の現実のもとで埋め込まれ分離された諸過程をあらわにし、社会技術複合体として再構成可能な諸現実を示さなければならない。構築主義的社会システム論はまた、新しい現実に到達するために可能なシナリオと思索を構築するための支えになるだろう。

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© 2019 社会・経済システム学会
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