抄録
本研究では外岩民俗村に現存する朝鮮時代両班家の一つの李得善家を中心にこの住宅の方位,配置,棟の構成と室名,各室の開口部デザイン,収納空間を分析した。本研究は文献分析と事例調査を行い以下のような結果を得た。
1)李得善住宅は全体的に南西向きの家であった。
“ムンガンチエ Munganchae”が一番西の方に傾いており,“アンチエ Anchae”はおよそ南向きであった。“サランチエ Sarangchae”はおよそ南東向きであった。
2)李得善住宅は全体が棟で区分されていた。
全体的な平面形態は欠けたロの字型であり,ここに一字型が複合されていた。空間は性別によって区分して女性は“アンチエ”,男性は“サランチエ”に住んだ。
3)住宅各棟は年齢による序列によって室を区分し使用されていた。また室の名称も序列によって異なる名称であった。
4)李得善住宅では多様な収納の知恵を持っていた。
5)李得善住宅では多様な種類の門・戸が使用されていた。
以上の結果は,消えてゆく韓国の住宅デザインの伝統性を 見出し伝承することに寄与できると考えられる。