日本インテリア学会 論文報告集
Online ISSN : 2435-5542
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  • 小林 茂雄
    2023 年 33 巻 p. 1-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    男女の対人距離,特に顔見知り程度の間柄で,恋人関係ではないが恋愛意識を持つと心の中で想定した男女の距離に着目した。室内で二人だけで会話する状況で,片方が相手との最短距離に立位で近づくように教示する実験を行った。その結果,好みのタイプの異性との距離は,男性は暗くて横並びの場合に,女性は暗くて正面方向の場合に最も近くなった。また男性も女性も,暗くて横並びの時に最も話しやすいと評価した。既に恋愛関係にあるカップルは横並びで接近するという傾向があるということは既往研究で示されているが,恋愛初期でもその状態が好まれることが確認できた。
  • 松田 奈緒子, 長野 和雄
    2023 年 33 巻 p. 7-15
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,1990年前後に放送され,当時の若者に影響を与えた,いわゆるトレンディドラマに描かれたインテリア空間の特徴を明らかにすることである。11作品を全話視聴し,その中に登場する27戸の居住空間に描かれたインテリア要素48項目を抽出した。その結果,前半8作品19戸中,床の段差16戸,ガラスブロック6戸と多用されていること,それがバブル崩壊後の後半の作品では,3作品8戸中それぞれ1戸であったこと,ダイニングテーブルよりもローテーブルでの食事が多いこと等が明らかになった。これらの集計結果に基づき,11作品中9作品を担当した美術セットデザイナーにインタビューを行った。インテリア要素の取捨選択には6つの狙い・理由があること、さらにこれらは、視聴者の願望に沿う(戦略)、視聴者の生活実態に合わせる(世相適応)、撮影の邪魔になるものを省く(対症)の3群に分類できることが見出された。その思考プロセスにおいて,舞台の手法・過去の仕事経験・旅行等で見聞した知識に着想を得ていた。とくに舞台の手法がトレンディドラマに固有の特徴を生んでいた。
  • 松本 佳津, 陳 曄, 夏目 欣昇, 北川 啓介
    2023 年 33 巻 p. 17-22
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,高齢者の自宅の居場所にあるモノに着目した。360度カメラに映し出されたモノと,コレスポンデンス分析からモノとモノとの関係性を探ることでインテリア活用の可能性を見出し,高齢者自身が少しでも長く自立・自律できるようにすることが目的である。現状と分析より,1.自分仕様への工夫の道筋,2.抗加齢の対策,3.高齢者の特性を支援の3点の要因を見出した。
  • 松本 佳津, 陳 曄, 夏目 欣昇, 北川 啓介
    2023 年 33 巻 p. 23-30
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢者が自立して自身の自宅で過ごすためにはインテリアの活用が有効ではないか,という仮説からいつもいる居場所である居室の床に置かれたモノに着目した。 現場でのヒアリングから一番身近な環境である高齢者の居場所の床に置かれたモノとモノの高さも加味した考察と,モノと床との関係性からコレスポンデンス分析を行い,高齢者の特徴や着眼点を見出し , 安全・安心・健康から本質的な高齢者の特徴を探りインテリアのポイントとなる9点を抽出した。
  • 加藤 祥子
    2023 年 33 巻 p. 31-36
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    SNSとインテリアづくりやインドアプランツ利用との関係を調査するアンケート調査を行った。20代・30代では,56%がインテリアの情報収集に SNS を活用していた。SNS の活用は,住宅でのインドアプランツの利用に影響を及ぼし,SNS を活用している方がインドアプランツの利用率が高く,幅広い種類のインドアプランツを利用している傾向が示された。SNS を参照することにより,インドアプランツの置き方や種類などが参考にされていた。インドアプランツの利用が SNS によりイメージとして拡散することが期待される一方,管理方法などの情報伝達が重要と考えられた。
  • 江川 香奈, 曽根 里子, 木村 敦
    2023 年 33 巻 p. 37-41
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    大規模な集合住宅では,生活を豊かにすることを目的とした共用施設が設置されている。これらの共用施設は共益費で管理・メンテナンスを行うことが多く,その負担も含めた設置の有無に関するニーズに沿った整備が求められる。本研究では,今後の高齢化社会を鑑み,共用施設の利用意図と必要性に関する,アンケート調査を実施した。 得られた結果を,若年・壮年世代と高齢世代間で比較し,共通項や差異を,統計的分析を用い把握した。分析結果から,両群ともに利用意図が必要性より有意に高い施設,及びそれぞれの年代での利用意図が必要性よりも高い施設,両群から利用頻度が低いとしても,必要であると考えられる施設等を明らかにした。また高齢群は,若年・壮年群より有意に利用意図や必要性が高い共用施設は少なかった。このため,今後はその要因を明らかにし,高齢世代のニーズも考慮した共用施設の設計及びインテリアデザインの提案が必要であると考えられた。
  • 堀下 優衣, 高柳 英明, 斉藤 圭
    2023 年 33 巻 p. 43-48
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    目下SARS-COV-2感染蔓延状況は,当初の社会認識・想定を遥かに超えて長期化しており,我々の都市生活も否応なしに新しい生活様式への適応を強いられてきた。一方,商業施設や居住空間での室内空間計画については,来店者数減への対応や,リモートワークへのニーズに応えるべく,より顧客に印象づけるインテリア環境の構築,自宅作業時の緊張緩和に寄与する学術的知見が求められる。 本研究は,噴霧型フレグランス(気質滞留する粒子芳香)を特定のイメージ・スタイルを持つ既存空間に適用し,センサ装着にて生体情報計測を通じ被験者の緊張緩和等の感性反応変異を数値評価する。新しい生活様式にて求められる空間での効果を明示するための予備的な知見を得ることを目的とする。
  • 江川 香奈, 島田 尊正, 木村 敦
    2023 年 33 巻 p. 49-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    病室から眺められる庭園等に植栽を配置することは,心理的に有効であるとされており,積極的に取り入れている施設も見られる。本研究では1植栽の画像(緑,赤,白)を見た場合を対象とし,脳波を測定し,植栽の色環境が与えるストレス低減効果と安静度への影響を把握した。さらにより詳細にその影響を把握するために前調査で使用した画像に加え,各画像の色素をランダム配置した画像を見た後の印象を,VAS 方式を用いたストレス度の記入,及び病院の庭の印象に関する項目について5段階で評価する質問紙調査を実施した。 結果から,赤い花を花として認識できる際には,白い花や緑の植栽と比較し,ストレス軽減効果,励ましの効果が高いことが確認できた。病院の植栽を検討する際には,その病院の患者のニーズを考慮した上で,赤い花を候補のひとつとして取り入れることは有用であると考えられた。
  • 髙橋 優斗, 大崎 淳史
    2023 年 33 巻 p. 55-62
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    近年増加傾向にある義務教育学校の建築計画的知見を得るため,全国の義務教育学校を対象にアンケートを行った。その結果,以下の知見が得られた。 ・小学校での教科担任制の導入は,教育の質の向上や教員の空き時間の確保を促す一方で,複雑化した時間割編成や教員不足解消など課題が浮き彫りになった。 ・小学校や中学校を改修して施設一体型の義務教育学校として整備する際,児童生徒の身体にあった家具・設備の整備が求められる。 ・施設分離型・隣接型は,カリキュラムなどの学校運営上の工夫と共に,両校舎がスムーズに連絡できる環境が必要である。
  • 特別教室の保有数と共用の全国的な傾向に着目して
    飯田 兼都, 生田 京子
    2023 年 33 巻 p. 63-68
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では施設一体型小中一貫校・義務教育学校の特別教室を対象とし,床面積・室数・小中共用利用の実態について全国的傾向を把握した。また特別教室の稼働率を分析し,科目ごとに配慮しなければならない特徴や,どの特別教室を二科目兼用と設定しうるか,その室数設定についても検討のための指標を得ることができた。加えて特別教室の,準備室の規模や備品量,収納棚や机・椅子などの家具配置など,部屋内部のレイアウトの実態の把握をした。 それらにより施設一体型小中一貫校・義務教育学校における特別教室の規模適正化にむけた計画の基礎資料を得ることができた。
  • 浅野 仁太, 大崎 淳史
    2023 年 33 巻 p. 69-76
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は今後の視覚障害特別支援学校における校舎の構造化及び環境づくりとしての建築計画的知見を得るため,全国の視覚障害特別支援学校を対象にアンケートを行った。その結果,以下のことがわかった。 1.視覚障害特別支援学校では知的障害教育における構造化に加えて,見えづらい人もしくは見えない人に配慮した視覚障害特別支援校特有の環境づくりが行われている。 2.視覚障害特別支援学校特有の環境づくりとして,校内の歩行ルールと教室内における学習環境の整備がある。 3.環境づくりは現場の教職員が担っており,児童生徒の障害の程度や適性に応じた工夫が求められる。
  • 藤井 容子
    2023 年 33 巻 p. 77-82
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    新型コロナウイルス感染症による影響が長期化する中,文部科学省はガイドラインを提示し,学校運営の指針を示している。しかし,その中の対策の多くは,一時的・暫定的な対応に留まり,建築計画・設備計画までの言及は少ない。 本研究では,富山県の特別支援学校を対象としたアンケート調査を通じ,新型コロナウイルス感染期における特別支援学校の建築のハード面に関する施設整備の現状と課題を明らかにすることを試みた。 結果として,1)児童生徒数が多い学校では,児童生徒 1人あたりの各種面積が小さいことにより,密集の回避が困難であること,2)日常生活上の介助が必要な児童生徒に対しては,児童生徒と教員との密接に不可避な側面があること,3)校舎のバリアフリー化が整備されていない学校では,食事を各教室に運搬することができず,分散給食による給食時の感染リスクの低減が困難であること,が明らかとなった。
  • 小林 茂雄, 浅野 桃花
    2023 年 33 巻 p. 83-88
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,オンラインミーティングの種類に適した照明条件と活用方法を把握するため,事例調査と照明実験を行った。実験の結果,フォーマルミーティングは許容できる照明条件の範囲が狭く,イベント的ミーティング,カジュアルミーティングの順に許容できる範囲が広くなることが分かった。白色光で陰影のない条件はフォーマルとカジュアルで,暖色光や陰影がある条件はカジュアル,電飾を使用したものはイベントで参加しやすいという結果が得られた。さらに参加者同士の光色や陰影などの照明の状態を揃えることで,ミーティングの一体感や空間の共有意識が高められやすくなると考えられた。
  • 田中 文翔, 高柳 英明, 木原 己人, 末繁 雄一
    2023 年 33 巻 p. 89-94
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,我が国ではスマートシティ化が推進されており,モビリティが普及しつつある。その中でも,少子高齢化の進む日本では,高齢者等の個人移動をサポートするパーソナルビークルが導入され,歩車融合が進むと考えられる。しかし,首都圏における生活者の増加によって歩行負荷が増すといった歩行空間の問題が発生している。その様な環境下においてパーソナルビークルを導入する為には,シミュレーションによる検証が必要不可欠である。本研究では,日吉駅構内を対象に,サービス水準を基にした歩車融合空間の検証を行う。これにより,今後想定される歩行空間での歩車融合化を進める際にシミュレーション予測による一定の安全性を確保した空間設計や既存空間における安全性等の評価・検証への活用が可能であると考える。
  • 新潟県・長野県の秋山郷8集落を事例として
    武田 美恵
    2023 年 33 巻 p. 95-102
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,農村集落景観に影響する民家の外観変容と相互扶助の関係性を明らかにするため,新潟県及び長野県にまたがる秋山郷8集落の伝統的民家を対象として外観改修状況及び改修理由と住民同士の相互扶助の実態について調査した。 その結果,茅葺だった民家は,昭和40年代以降,雪降ろしを楽にするために落雪型の鉄板葺に替えていった。また,茅及び人手の減少により住民同士で葺替作業ができなくなり,茅葺を除去する民家が増えていった。秋山郷の中門造の特徴である茅壁は昭和36年に消滅し,外壁は杉板張からトタンやサイディングボードに張り替えていった。 外観に統一感がなくなっていった要因として,長持ちする材料を用いて,相互扶助に頼らずに維持管理できるように改修していったことが挙げられる。
  • 羽藤 広輔, 千葉 大介
    2023 年 33 巻 p. 103-108
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,「出雲大社庁の舎」等の計画で知られる菊竹清訓の伝統論が,1954年から1960年までの間,いかに展開されていたのかを明らかにするものである。対象期間を通じて最も多く見られたのが,〈都市と個人をつなぐ公共空間の確立〉の主張であり,〈民衆の視座への共感〉や,庭のあり方等の〈既存伝統理解への懸念〉を背景に,個人と都市の間をつなぐ公共空間の確立が,同時期の菊竹の活動の主題となっていたことが読み取れる。菊竹の伝統論の主要な論旨と考えられてきた〈機械・技術による伝統改革〉,〈増改築のしやすさ〉,〈構造的一貫性の重視〉に関する内容は1959年以降を中心に見られた。
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