日本音響学会誌
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周波数変化する短音の周波数弁別限
山下 恭弘竹前 忠
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1989 年 45 巻 6 号 p. 419-425

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抄録

本稿は短時間に周波数変化する短音を取り上げ、周波数変化の弁別限を聴感実験により求めて短音を決定づけている諸要因とそれらの関係について検討した。短音は継続時間全体で周波数が直線的に上昇あるいは下降変化する単純な形とした。短音の継続時間を50〜200msの範囲に設定した。短音の始端の周波数を500、1k、2kHzに選び、始端の周波数に対して周波数変化率5、20、50、100%の周波数変化幅を持たせた。実験は1対の試験音と基準音を連続して発生させ、調整法により周波数変化の弁別限を求めた。実験の結果、短音の始端側を調整するのと、終端側を調整するので周波数弁別限に幾つかの相違点が見られた。前者の周波数弁別限は、後者より大きいことを示した。これは変化音のピッチ感の重みが短音の終端側にあるためと考える。周波数変化率が小さくなるに従い、弁別限は小さくなり純音の周波数弁別限に近づく。一方、周波数変化率が大きくなるに従い弁別限は大きくなる。以上、短時間に周波数変化する音の周波数変化の弁別限の一端を説明づけた。

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© 1989 一般社団法人 日本音響学会
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