1995 年 51 巻 9 号 p. 690-697
本論文は、邦楽における代表的な撥弦楽器の一つである三味線を取り上げ、三味線の各部がどのように働き、どのようなメカニズムで音が発生するかという発音機構について考察したものである。まず三味線音の特徴をもとに時間経過に従って四つの領域に分類し、次に各々について皮、駒及び撥の振動波形の時間周波数解析結果を三味線音波形のそれと比較し、撥で弦や皮を叩く過渡的な状態も含めた発音機構について考察した。その結果皮の振動は、(1)弦の振動が駒を通じて皮に伝わることによる持続的な振動と、(2)撥が直接皮に接触することによる過渡的な振動、の二つによって構成され、この二つの振動が主に組み合わされて三味線独自の音が発生することが分かった。