1999 年 55 巻 11 号 p. 742-751
MA過程の共分散が与えられたときに,振幅スペク1・ルは容易に求めることができる。よく知られているように,このとき最小位相スペクトルは,対数振幅スペクトルのHilbert変換として積分方程式の形で与えられる。この積分の値は,今まで直接的に求められてはいない。本論文ではこの積分の値を直接的に求めることによって,q次のMA過程の最小位相スペクトルは,共分散のz変換を双線形z変換して得られるq次の代数方程式の根を得ることによって求めることができることを示す。結果の具体的な応用例として,ここで求められた最小位相スペクトルから,有効数字の桁数を含めて最小位相多項式を求める方法を示す。