抄録
我が国の公共ホールの評価のあり方は、1990年代後半から地方自治体で行政評価の導入が進んだこと、2003年に指定管理者制度が導入されたことなどにより、現在大きな課題となっている。
「公共ホールが実現すべき価値は何か」というミッションを明確に示し、日標にそって効果的に運営していくために、評価は本質的に必要である。しかし、芸術文化事業を核とする公共ホール運営においては、その成果が集客率や収益性といった数値指標で表わすことができるものにとどまらず、定性的な評価が求められ、そのことが公共ホールの評価が難しいとされる所以となっている。必ずしも客観的な数字に表わすことのできない多様な成果をいかにして示すかということが、公共ホール評価における1つの大きな課題である。特に近年、自治体の財政難を背景に、歳出削減の圧力が強い中、数値指標のみに依拠した評価が行われる事態が全国的に散見される。いま一度、公共ホールの地域社会における役割は何か、芸術文化の意義・役割とは何かといったことについての理論的検討が必要である。
本稿では、公共ホールの評価について、公共ホールの地域における役割や芸術文化の社会的意義(公共性)についての検討を踏まえた上で、公共ホールの評価において重要な基本的視点を提示する。