今日、地方公共団体の財政状況の悪化、事業評価の厳密化、効率性を求めて導入された指定管理者制度等、地域の文化振興の拠点である文化施設を取り巻く環境は厳しい。このような状況下、本研究は、国の重要な施策の一つである「芸術拠点形成事業」の実態把握により、その役割、効果をより総合的に明らかにすることで、今後の制度運営、拡充整備に当たって必要となる客観的なデータを収集、検討することを主たる目的として行った。具体的には文化庁芸術拠点形成施設を対象に、マネジメントに関する定量的データの調査及び施設担当者の意識調査を実施した。同時により詳細な情報を得る目的で、地域的バランス、活動等の特色などを勘案し、いくつかの施設を抽出、訪問或いは関係者・有識者の招聘により、補足的なヒアリングも実施した。 調査の結果から、芸術拠点形成施設は地域性を反映して、多様な活動を展開しているが、自主事業の事業費、観客数、収入の減少を共通の課題として抱えていることが明確になった。また、芸術拠点形成事業の助成は、自主事業における創造的な公演活動を継続するためには不可欠であり、この制度が地域拠点施設での文化創造の下支えになっていることが明らかになった。同時に、いずれの施設においても市場・観客の獲得が喫緊の課題であることが判明した。