抄録
細胞周期中のG2期からM期にかけて、サイクリンBなどの一群の遺伝子が発現することが知られている。このようなG2/M期特異的転写はプロモーター中に存在するMSA (M-specific activator) エレメントとそこに結合する一群のc-Myb様転写因子の働きによって制御されている。タバコから単離したc-Myb様転写因子、NtmybA1、NtmybA2、NtmybBは同様にMSAエレメントに結合するが、プロトプラストを用いた一過的発現系においてはNtmybA1とA2は転写活性化因子として、NtmybBは競合的な転写抑制因子として働くことが示されている。これらタバコc-Myb様転写因子のin vivoにおける機能を探るため、CaMV35Sプロモーターを用いた過剰発現体やRNA干渉(RNAi)による発現抑制体を作出した。これまでにNtmybA2の発現を抑制したタバコ培養細胞BY2においてはカルス増殖速度の低下、4CレベルのDNAを持つ細胞頻度の増大がみられ、NtmybBの発現を抑止すると逆の効果が見られることを明らかにしている。この結果は、G2/M期進行をNtmybA2が促進的に制御し、NtmybBが抑制的に制御していると解釈でき、一過的発現系で見られるサイクリンBプロモーターに対する働きと合致する。同様の解析をタバコ毛状根、タバコ植物体において行っているので合わせて報告する。