学校メンタルヘルス
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ショートレポート
精神的充足の概念整理における予備的研究
山田 達人桂川 泰典藤井 靖菅野 純
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2016 年 19 巻 1 号 p. 91-98

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抄録

【問題と目的】応用行動分析では,子どもが正の強化を受ける頻度を高め,自発的に行動することを目的に介入を行う。この目的と精神的充足の概念は関連があると考えられる。しかし,精神的充足の概念は,統計的な根拠について検討の余地がある。そこで本研究では,安定した精神的充足の概念を抽出するための予備的研究として,構成概念の範囲について仮説生成を行うことを目的とした。

【方法】小学6年生3名,および,大学生2名にインタビュー調査(半構造化面接)を実施した。インタビューの内容は「自分の力を発揮した出来事」であった。その後,インタビューデータから自分の力を発揮した出来事に関する項目を大学院生3名と大学教員1名で生成した。次にインタビュー対象者とは別の小学生11名に,生成された各項目に当てはまる感情を,感情カテゴリー(「達成感・充実感」「喜んだ」「ホッとした」)から2件法で評価してもらった。

【結果】生成された項目における感情カテゴリーごとの再評価得点の合計を変数としたクラスター分析(Ward法)を行った。その結果,生成された項目は,3つのクラスターに分類された。

【考察】本研究では,精神的充足を構成する3つの概念の中で,「安心感」に関する概念は抽出されなかった。その理由については2つの仮説が想定された。1つ目は,「安心感」が,「楽しい体験」や「認められる体験」と構成概念の範囲を共有する概念であるためである。2つ目は,インタビューにおけるサンプルサイズが小さかったため,「安心感」の概念が抽出されなかった可能性である。今後は,これら2つの仮説に対して妥当な判断を行うため,さらなる検討が必要となるだろう。

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© 2016 日本学校メンタルヘルス学会
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