2017 年 20 巻 2 号 p. 148-159
【問題と目的】本研究は,動的学校画の描画特徴と学校適応との関連を調べることを目的とした。
【方法】小学校3校の600名を対象として動的学校画,学級満足度尺度,児童用メンタルヘルスチェックリストのストレス症状尺度を実施し,低・中・高学年ごとに分析を行った。
【結果】低・中・高学年ともに適応群は明るい印象の絵を描き,絵のその後の物語はポジティブで統合性は高かった。低学年と高学年の適応群では先生像の表情が親しい・楽しいものが多く,中学年の適応群では自己像の顔の向きが正面向きのものが多かった。高学年の適応群では先生像が大きく描かれた。不適応群では,低・中・高学年ともに暗い印象や明るいとも暗いとも判断のつきかねる絵が多く,絵のその後の物語はネガティブで統合性は低かった。低学年の不適応群の先生像・顔の描画では眼・鼻・口あり絵が少なく,友達像では表情なしが多かった。中学年の不適応群では後向きの自己像が多く,先生像や友達像そのものが描かれない絵も多かった。また,自己像と先生像が近くに描かれた。高学年の不適応群では自己像や先生像に中立の表情が多く,友達像では横向きの顔が多かった。
【考察】本研究では,低学年における適応・不適応の指標が示された。また,全体的印象や人物像の描かれ方,人物像の表情など,新たな適応・不適応の指標が明らかとなった。