学校メンタルヘルス
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資料論文
コロナ禍における女子大学生のセルフアドボカシーの意識
―フォーカス・グループ・インタビュー調査―
村松 秀樹沢崎 真史
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2024 年 27 巻 1 号 p. 67-77

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抄録

【問題と目的】本研究では,コロナ禍の環境下で,女子大学生がセルフアドボカシー(SA)を意識し,実践していたか,その実態を明らかにすることを目的とした。また,日本では,SAの概念が一般的に認知されていない現状があり,「日本の大学生は,日常的にSAの概念を明確に意識していない」という仮説検証を実施した。

【方法】女子大学生(N = 15)を対象にフォーカス・グループ・インタビュー(FGI)調査を実施し,収集した質的データをTA(Thematic Analysis)法という質的研究法を用いて分類し,検討を行った。また,仮説検証のために,方法的複眼として質問紙調査も実施した。

【結果】質的データを分類した結果,4の主題と4の副主題,20の副題が生成され,SAの実態に関係する複数の問題提起を行った。また,質問紙調査の結果,女子大学生(N = 387,平均年齢19.23 ± 1.17)は,(1)アドボカシーの意味を理解「ややしていない」・「していない」が90.2%(n = 348),(2)SAについて「あまり知らない」・「知らない」が91.7%(n = 355)であった。

【考察】女子大学生の多くがSAに関する意識が日常的に希薄であり,仮説の一定の支持がされた。また,女子大学生はセルフアドボカシースキル(SAS)の構成要素の重要性の認識はある程度持っていたが,SASの獲得が不十分な学生や大学生活で精神的困難など課題を持つ学生も一定数存在した。学校の支援体制ではインターネット環境に不備はあるが,相談窓口などはある程度整備され,援助要請行動を行う女子大学生が一定数存在した。大学は,障害学生に対するSAS教育だけでなく,一般的な学生にSAの概念の認知を普及させるために一次的援助サービスなど教育活動を行う必要があることが示唆された。

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