抄録
本稿は,因果連鎖の網の目構造論の立場(根来, 2008)から,意図せざる結果の類型化とそれへの対処について考えることを目的とする.意図せざる結果に関する議論は,基本的にはいかなる行為も,意図した結果のみならず,多かれ少なかれ意図せざる結果をも産むという問題認識に立っている.本稿では,行為者が自らの置かれている因果連鎖環境をどこまで読みきれているかどうかによって,意図せざる結果を5つのパターンに類型化する.類型化によって意図せざる結果の議論を網羅的に理解するとともに,避けることのできない宿命にある意図せざる結果への一定の対処方法として,因果連鎖の読みのパターンを広げることを提案する.