抄録
近年では,組織マネージャーの取り巻く環境が非常に複雑化してきており,異なる価値観や関心を持つ多様なステークホルダーを含むシステムを扱う必要が出てきている.特に,利害対立が生じる問題状況下では,意思決定プロセスに取り込むべきステークホルダーを同定することや,ステークホルダー間での目的を共有することが困難なケースが生じる.本論では,施策の意思決定プロセスにおいてエージェントベース社会シミュレーション(ABSS)が果たす役割について焦点を当てる.そして,実際にABSSを複雑な問題状況を抱える組織に適用することで,ABSSがステークホルダー間のコミュニケーションに重要な貢献を果たすことを示す.