抄録
本稿の目的は,わが国において介護福祉士を目指す外国人留学生の現状と,外国人介護福祉従事者
への評価をふまえ,最終的には(日本人介護福祉従事者を含む)今後の労働環境の展開とその含意について叙述することである.この目的を果たす観点から,(1)複数の受け入れ制度,(2)介護福祉士国家試験の合格実績,(3)養成施設校卒業後の進路,(4)介護福祉従事者としての評価,(5)人材育成と人材確保の非連動性,(6)介護福祉分野の労働環境に影響を与えうる近年のわが国の施策とその含意,の順に考察する.
本稿における知見のなかで重要になるのは,次の 3 点である.①わが国に来日した外国人で,介護福祉士を目指す者のうちの一定数は優秀な介護福祉従事者になりうる条件を備えている,②しかし,全体の必要人数を鑑みたとき,基本的には日本人にとって魅力ある職種になるような相応の待遇改善策が必要である,③介護福祉の労働環境に影響を与える近年のわが国の政策は,外国人介護福祉従事者増大のいかんにかかわらず,労働環境の改善に資するとは言いがたい.