日本の介護産業の労働力不足は, 今後ますます深刻化することが予想されており, 介護分野における生産性の向上が最重要課題となっている. この課題に対しスタンディングマシーンを使用した研究において, 複数台を同時に使用することで, 量的な効率化を行えることが明らかとなっている. しかし, 先行研究では前述の研究以外に, スタンディングマシーンの使用が生産性向上につながるという研究は見られない. 本研究の対象施設であるA介護老人福祉施設では, 移乗手段としてスタンディングマシーンを使用していたが, 移乗に時間がかかるという理由で, 介護職員から不満が出ていた. 試行錯誤の結果, 従来のスタンディングマシーンの使用目的である移乗に, 移動と座位保持を加えることで, スタンディングマシーンのスリングの着脱回数を3回から1回に減少させることが可能となった. 本研究では, このスタンディングマシーンの新しい使用法により, 介助手順の省略に成功した事例を報告する. その中で, 従来のスタンディングマシーンの使用法と, 新しいスタンディングマシーンの使用法を比較し, 手順省略の具体的な内容を明らかにする. また, 手順省略以外に, どのような生産性向上がなされているかを考察する. 本研究はスタンディングマシーンの普及と介護分野における生産性向上に寄与すると考える.
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