抄録
長野県上高地南東方の徳本峠から大滝山にかけての山地斜面の重力変形について,航空レーザ測量による1 mメッシュの精細DEMをもちいた地形判読をもとに検討し,その発達過程を考察した.重力変形による微地形は,主稜線の北西側では全面的に発達し,一方南東側では主稜線や大きな派生尾根の周辺に限られる.重力変形ユニットの識別により,重力変形による運動は小規模な微小変形からはじまり,その結合による大きなユニットの形成,さらにその後ユニットの分化,局所化が引き続き起きたことが明らかになった.多くの重力変形ユニットはすべり面が完全に形成されておらず,変形斜面は全体としてサギングの状態にある.すなわち,本地域の斜面は重力変形が進行しながら,地すべりへの移行
は不完全なまま,現在は崩壊による解体段階にあるといえる.重力変形は上高地谷のせき止めによる埋積がはじまる12.4 kaより前には開始された可能性がある.