抄録
本研究の目的は、病院に就業する看護職者の学習ニードを明らかにし、その特徴について考察することである。測定用具には学習ニードの有無を問う選択回答式質問とその内容を問う自由回答式質問から成る質問紙を用い、郵送法により全国の病院に就業する看護職者943名に質問紙を配布した。回収された質問紙590のうち、自由回答式質問に回答した520名分の記述をベレルソンの内容分析の手法を用いて分析した。その結果、対象者の記述は病院に就業する看護職者の学習ニードを表す28カテゴリを形成した。この28カテゴリとは、【所属看護単位の専門性に応じた看護実践に必要な理論・知識・技術・態度】【看護学生・スタッフ教育に必要な理論・知識・技術】【リーダー・メンバー役割遂行に必要な理論・知識・技術・態度】【看護実践に必要な法律・制度に関する知識とその活用方法】【科学的根拠に基づく看護実践に向けた研究成果活用のための知識・技術】【自己管理と自己評価のための知識・技術】等であった。スコットの式によるカテゴリへの分類の一致率は、71.5%、75.6%、76.4%であり、28カテゴリが信頼性を確保していることを示した。考察の結果、学習ニード28種類がその関連性から6つに構造化されるという特徴を持つことが示唆された。6つの構造とは、≪所属看護単位の特徴に応じた既習内容の専門化≫≪多様な教育的機能の発揮≫≪組織運営への参画者としての役割遂行≫≪流動する社会がもたらす実践環境変化への対応≫≪研究遂行と成果活用による看護業務の効率化・看護の質保証≫≪看護専門職者として発展し続けるための自律的活動≫である。