2019 年 28 巻 1 号 p. 57-70
本研究の目的は、看護学実習における学生の医療事故防止に向け、実習指導者が講じている医療事故防止対策の全容を解明し、その特徴を考察することである。本研究は、筆者らの先行研究により収集したデータを用いた二次分析である。先行研究は、全国の病院に就業する実習指導者1,309名を対象とし、調査を実施した。本研究は、この調査に用いた質問紙に含まれる項目のうち、実習指導者の医療事故防止に向けた対策を問う自由回答式質問と実習指導者の特性を問う質問への回答を分析対象とした。Berelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いて、有効回答665名分の記述を分析した。その結果、実習指導者が講じている医療事故防止対策を表す29カテゴリが形成された。29カテゴリとは、【学生に援助にともなう事故回避に向け、厳守すべきルールを伝えるとともに自らも実習指導上のルールを厳守する】、【実習指導者・看護スタッフのいずれかが援助に同行できるよう勤務帯構成員を配置するとともに学生に援助時間の分散を求める】などである。Scott, W.A.の式に基づくカテゴリへの分類の一致率は70%以上であり、カテゴリが信頼性を確保していることを示した。考察の結果は、実習指導者が講じている医療事故防止対策が、8種類の特徴を持つことを示唆した。本研究の結果は、実習指導者が、自身の医療事故防止対策を客観的に理解したり、改善したりするために活用可能である。