2017 年 14 巻 p. 31-38
摂食障害患者の治療において、症状評価に加えパーソナリティの把握は必須である。摂食障害を呈したアスリートのパーソナリティと競技特性との関連は指摘されているが、アスリートにおいても個々のパーソナリティを理解する必要がある。そこで本研究は、神経性過食症を呈した女性アスリート3症例に実施したロールシャッハ・テスト結果を先行論文の知見と比較し、継列分析を行った上で、その特徴を考察した。その結果、一般アスリート群と同様に内向的傾向が示されたが、現実検討力が低く現実から逸脱した価値基準に重きを置きやすい傾向が見出された。また原始的防衛機制を使用する境界人格構造の患者の特徴とも一致する結果となった。3症例とも対象との安定した関わりが困難であり、指導者や治療者との関係においても再演される可能性が示唆された。摂食障害のアスリートのパーソナリティについての研究は今後とも検討を重ねていく必要がある。