2006 年 3 巻 p. 24-28
目的:以前より抗精神病薬多剤療法における多くの問題点が指摘されている。今回我々は統合失調症の認知機能のひとつである微細な運動機能(神経学的徴候)に及ぼす抗精神病薬多剤療法の影響について検討した。
対象と方法:DSM-III-RあるいはDSM-IVにて統合失調症と診断された73名の患者(36名の抗精神病薬多剤併用群、20名の新規抗精神病薬単剤群、17名の未服薬群)を対象に包括的な神経学的徴候の検査を行った。全例、神経疾患、薬物乱用、アルコール症、電気けいれん療法の既往はなかった。また振戦や筋強剛といった明らかなパーキンソン症状も認めなかった。
結果:感覚統合、原始反射では3群間に有意な差はなかったが、連続・協調運動および総得点において、多剤併用群は単剤群、未服薬群より有意に得点が高かった。
考察:抗精神病薬多剤療法は統合失調症の微細な運動機能に悪影響を与え、QOLを低下させる可能性が示唆された。