抄録
ある地域における土地利用計画を策定しようとする場合、土地利用項目に対する適地性は重要な因子となる。地理情報システムは卓越した空間解析能力を有することから、しばしば適地評価に利用されるが、土地利用計画を作成するためには、個々の土地利用項目に対して行われた評価結果を統合するための論理が必要となる。特に、ある程度開発が進み、都市的な土地利用が成立している地域においては、これまでの政策や発展方向を十分に考慮した計画の立案が望まれる。本研究では、栃木県内の49市町村の産業特性を示す統計資料を用いて、主成分分析による地域機能の分析を行い、各市町村の商業、農業、工業、宅地に関する成分を抽出した。これに基づいて全市町村の機能類型を行った結果、商業、農業、工業、宅地のいずれか一種が卓越している市町村は22地区であり、栃木県全体として中程度の機能分化が進んでいると推察された。ただし、8町村が農業主体のクラスに分類されていることから、今後、都市的産業の進展に伴う変化も予想された。一方、数種の機能が混在する地区では、商業または工業と複合するケースが多く認められた。さらにこれら4主成分における各市町村のスコアを荷重値として、あらかじめ作成されていた商業、農業、工業、宅地としての適地評価図の統合を試みた。4種類の適地評価図から上位15%ずつを抽出し、単純に重ね合わせた場合は、県内の68.2%の面積が未決領域となった。これは自然立地条件及び交通立地条件に基づく適地評価では、いずれの土地利用項目でも適地条件が類似のものになり易く、その結果として選定される最適地が等しくなるためであると考えられた。これに対して、主成分スコアを荷重値として与えた場合、各市町村における産業的な優位性が反映され、適地の細分化が行われる。この結果、未決領域は34.7%となり、適地評価を統合するために主成分スコアを用いる効果が認められた。