抄録
中国における代表的な水稲作地域の1つである黒龍江省全域を対象として、水田分布とその近年の変化を把握するため、TerraおよびAqua衛星のMODISデータを用いた水田面積算定手法を開発した。対象地域において、水稲移植直後に当たる6月上旬において、水田は湛水状態にあり、畑作地が裸地状態にあるが、MODISのバンド1とバンド2から得られる正規化植生指数(NDVI)とバンド1とバンド7から得られる正規化裸地指数(NDBSI)の2次元散布図上での位置と画素内水田面積率との間に一定の関係があることを見出した。そこで、散布図の形状から得られる1個の指標値を導入し、画素毎に水田面積率を算出し、黒龍江省内の水田分布を示した。Landsatデータを用いた水田の抽出値と比較した結果、県単位とする集計値に十分な整合が認められた。また、算定に用いる指標値と画素内水田面積率とは、異なる年度に対しても同様の振る舞いを持つ安定した関係であることが示された。本手法を適用し、2003年から2007年の黒龍江省の水田分布を分析し、変化傾向を調べたところ、東部に位置する三江平原において、2006年以降水田の急激な増加があったことが判り、本手法が広域の土地利用の変化を迅速に捉える技術として有効であることが示された。