システム農学
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研究論文
アロメトリー式から求めた地上部現存量と林分構成による放棄竹林の構造解析
後藤 誠二朗巳嘎那河合 洋人張 福平渡辺 修西條 好廸秋山 侃
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2008 年 24 巻 4 号 p. 223-232

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抄録
1970年代以降、経営難等の理由により管理放棄された竹林が日本各地で増加し、周辺植生への竹林の拡大による生態系の撹乱や竹林内部における倒竹、枯竹による景観の悪化等が社会問題となっている。竹林拡大に関する研究は多く見られるが、放棄竹林内部の構造(立竹密度、枯竹率、地上部現存量)については明らかにされていない。そこで、放棄竹林におけるモウソウチク、マダケ、ハチク、それぞれの地上部各部の乾物重を推定するためのアロメトリー式の作成、適合性の検証を行った。次に、放棄竹林の林分調査を行い、アロメトリー式から推定した地上部現存量と合わせて放棄竹林の構造について明らかにし、考察を行った。解析により、胸高直径(DBH)を用いたアロメトリー式から稈の乾物重を高い精度(モウソウチク:R2=0.9912、マダケ:R2=0.9621)で推定することが可能であることを検証した。しかし、枝葉は周囲の環境によってその発生量が異なるため、DBH を用いて乾物重を推定するアロメトリー式の検証精度(モウソウチク葉:R2=0.8755、モウソウチク枝:R2=0.8468、マダケ枝葉:R2=0.4863)はあまり高くなかった。放棄竹林の構造は管理竹林のように単一の種によって構成された均一なものではなく、構成する種やその割合において様々であった。立竹密度はいずれの林分においても管理竹林よりも非常に高かったが、地上部現存量は管理竹林よりも低い林分も見られた。枯竹率は立竹密度や地上部現存量と相関はなく0~30%の間が多かった。管理竹林とは異なる林分構成や存在しない枯竹によって放棄竹林内の環境が悪化した状態を荒廃しているとし、本来管理竹林には存在しない枯竹の割合が30%前後と高い林分では、その立竹密度や地上部現存量に関わらず荒廃した竹林と考えられる。枯竹率が低い場合、モウソウチク主体の放棄竹林では、地上部現存量が多い程竹林の荒廃が進んでいる。マダケ主体の放棄竹林では、立竹密度が高くなる程竹林の荒廃が進んでいると考えられる。
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© 2008 システム農学会
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