システム農学
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研究論文
導電率測定による灌漑水の無機態窒素濃度推定
平井 康丸森 裕樹濱上 邦彦
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2010 年 26 巻 4 号 p. 151-158

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抄録

水稲生産における肥培管理への利用を目的として、導電率(EC)測定による灌漑水の無機態窒素濃度(INC)推定について検討した。福岡県星野村の5つの水系を対象に、2008年および2009年の水稲生育期間中の灌漑水のINCとECのデータを収集し、両者の関係を線形回帰分析により考察した。また、灌漑水のINCが高い2水系(広内、鹿里)を対象にして、INCとECの線形関係に影響を及ぼす要因を明らかにするために、イオンバランスを求めた。さらに、INCの推定式の安定性を、採水日ごとに作成した推定式の傾き・切片の変動から検討し、推定式の精度を交差検定の平均相対誤差(MRECV)および相対誤差の標準偏差(SDRE)により評価した。得られた結果は次の通りである。(1) INCが3mg/L以下に分布する水系では、無機態窒素以外の溶存イオンの変動の影響が大きく、EC測定による推定は困難であると判断された。(2)灌漑水は流域の肥培管理の影響を受けて特徴的なイオンバランスを有するため、INCの推定式は水系別に作成するのが妥当と判断された。(3)肥培管理の影響を敏感に受ける採水点のデータを使用する場合は、推定式が不安定になる場合があることに注意する必要がある。 (4) INCが5mg/Lより高い条件では、MRECVは、広内水系で18~25%、鹿里水系で13~18%であり、SDREは、それぞれ15~20%、13~15%であった。これらの評価結果から、導電率測定による推定法は、INCが高濃度の条件において灌漑水による窒素供給量の目安を得るのに有用であると判断された。

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