システム農学
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研究論文
ベトナム中部サムアンチュルエンラグーンにおける漁労の空間的遷移
岡本 侑樹田中 樹水野 啓LE Van An
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2012 年 28 巻 2 号 p. 63-71

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抄録

本研究は、ベトナム中部汽水潟・サムアンチュルエンラグーン(地域名称)における囲い網漁場(Net-enclosure)での年代変化に伴う漁業活動の変化と空間的な変遷を明らかにしたものである。定置網(Nò Sáo :エリ網、Chuôm:竹漁礁)を利用した漁業は1960年代に小規模に行われてきた。 1980年代から2000年にかけてエビの養殖がサムアンチュルエンラグーンにも導入され増加した。養殖漁場は、定置網をもとに形成され囲い網漁場(Chắn Sáo:養殖と天然魚介類捕獲機能を併せ持つスタイル)として拡大していった。これらの漁場は、家族内で相続され、また地域内における取引売買も行われた。この結果、漁場の事実上の私有化と細分化が見られるようになり、漁場利用権が不明瞭で確約されたものでないのにもかかわらず、密集した漁場が形成された。ラグーンでは、違法な漁業や破壊的な活動が報告されており、これに対処すべく、囲い網漁場を利用する漁民は漁獲を守るための漁協の結成や、通行する船を監視するための水路を設置するなどの対処行動をとった。2008年には、フーバン県の養殖区画計画の政策が施行された。この計画によると、現行の水路(サーバック水路)の幅を2012年までに広げ、新たな水路をつくる計画である。この水路計画により、タンジュン村の近隣の囲い網漁場の6.8%が減少することとなり、計画区漁民の64%が半分以上の使用していた漁場を失うことになり、その内17%の漁民は90%以上の使用漁場を失うことが明らかになった。

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