システム農学
Online ISSN : 2189-0560
Print ISSN : 0913-7548
ISSN-L : 0913-7548
研究論文
光合成有効放射と近赤外放射の透過光の比と水稲の生育指標の相関
平井 康丸チー モー永松 明奈山川 武夫井上 英二岡安 崇史光岡 宗司
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 34 巻 3 号 p. 59-66

詳細
抄録

水稲の生育診断を生産現場で実施するに当たって、生育指標の簡易・省力的な計測が欠かせない。本研究では、水稲群落下で計測した700-1000 nmの波長帯(NIR)と400-700 nmの波長帯(PAR)の透過光の比NIRt/PARt(添え字のtはtransmittedの略)に着目した。NIRt/PARtを用いた水稲の生育指標推定の可能性を検討するために、葉身窒素含量(LNC)、稲体の乾物重(PDW)および稲体の窒素吸収量(PNU)との相関関係を明らかにすることを目的とした。窒素の施用方法を6通りに変化させた水稲栽培試験区において、分げつ盛期、幼穂分化期および開花期のNIRt/PARtを計測するとともに、LNC、PDWおよびPNUとの相関解析を行った。その結果、LNCについては分げつ盛期がr=0.507(p<0.05)、全生育期込みがr=0.762(p<0.01)と有意であった。PDWについては幼穂分化期がr=0.564(p<0.01)、全生育期込みがr=0.599(p<0.01)と有意であった。PNUについては分げつ盛期がr=0.484(p<0.05)、幼穂分化期がr=0.413(p<0.05)、全生育期込みがr=0.727(p<0.01)と有意であった。一方、開花期においてNIRt/PARtと各生育指標の相関が低かった。その理由として穂により群落のPARおよびNIRの透過・反射特性が変化したことが考えられた。また、PDWは出穂後のNIRt/PARtとの線形関係が大きく変化し、全生育期込みの相関係数が低下した。分げつ盛期および幼穂分化期のデータのみを用いた場合の相関係数は、LNCが r=0.856(p<0.01)、PDWがr=0.934(p<0.01)、PNUがr=0.874(p<0.01)に向上した。以上から、NIRt/PARtが出穂前の生育期を対象に水稲の生育指標の推定に利用できることが示唆された。

著者関連情報
© 2018 システム農学会
次の記事
feedback
Top