システム農学
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技術論文
Sentinel-2画像を用いた水田の塩類化土壌の抽出と稲作収量との関係
-タイ東北部マハサラカム県の事例-
河野 達也長澤 良太
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2019 年 35 巻 2 号 p. 25-32

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抄録

農作物の収量に大きな影響を与え、現在も拡大し続けている塩類化土壌を抽出するためには、衛星画像データを用いて時空間的に解析することが効果的である。タイ東北部は長年にわたり塩類化土壌の影響に悩まされており、主要農作物である稲の持続可能な栽培を困難にしている。本研究では、現地調査によって収集した水田土壌の塩類測定データとSentinel-2データの画像解析を用いて塩類化土壌の抽出手法を検討し、さらに塩類化の稲作収量へ与える影響について解析を行った。土壌調査では塩類化に係わる電気伝導度(EC1:5)と水素イオン値(pH1:5)の2項目を測定し、画像解析によって土壌ECマップと土壌pHマップを作成した。前者では総合精度83.67%、Kappa係数0.47、後者では総合精度81.63%、Kappa係数0.12の精度で分類された。これら2つのマップを重ね合わせて潜在的塩類化マップを作成し、水田の塩類化土壌の抽出を行った。一方、稲作収量レベルの空間分布を把握するために、稲作収量データと稲作栽培期間における正規化植生指数(NDVI)との相関関係を調べた。最も高い相関を示した穂ばらみ期に該当する2016年10月6日のNDVI値から稲作収量レベルのマップを作成した。潜在的塩類化マップと稲作収量レベルのマップより分布の特徴を比較したところ、塩類化土壌地域では非塩類化土壌地域よりも稲作収量が低くなっており、特に河川や池等の水域に近接するエリアでその傾向が顕著に認められた。

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© 2019 システム農学会
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