システム農学
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研究論文
スマート農業に向けた RGB−D カメラによる栽培野菜の草高推定に関する研究
近藤 烈司福元 伸也鹿嶋 雅之渡邊 睦神田 英司池澤 和広
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2022 年 38 巻 1 号 p. 15-24

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抄録

栽培野菜の生育状態推定を行う上で草高は重要な指標となる。草高とは植物の自然な高さのことであり、植物が植えられている地表面から最上部までの高さを指す。栽培現場では、草高の経時変化量に基づく草勢の強弱が灌水量や追肥量等を判断する指標となる。このような中、草高と果実収量の相関関係を利用した果実収量予測に関する研究が進められている。現在、様々な3次元形状計測機器を用いた草高計測の自動化が検討されており、その中でもRGB−Dカメラは比較的安価かつ簡便に距離データを取得できることが指摘されている。先行研究で提案されているRGB−Dカメラを用いた草高推定手法では、距離データからカメラに近い順で抽出される上位点(全ピクセルのうち5%及び10%)を平均化することで草高を推定している。しかし、上位点抽出時、茎頂部に加えて下層の葉も含まれることで実際よりも推定値が低く算出される場合があり、推定値の精度低下が予想された。そこで、本研究では比較的低コストで距離データを取得できるRGB−Dカメラを用いて対象植物の真上から撮影を行い、得た距離データに対して新たに提案する上位点探索手法に基づく解析を行うことで草高推定に取り組んだ。本手法における上位点探索では、探索された上位点を囲むある一定の範囲を除外しながら上位点を探索することで下層の葉の影響を受けず、植物が有する葉の密度が比較的小さくなる定植期から継続的に高精度な草高推定手法を目指した。評価実験として草高推定値と実測値の比較を行ったところ、推定値が実測値と同様の推移を示した。今回の実験では上述した先行研究の手法(全ピクセルのうち5%及び10%の上位点の平均)による草高推定値の推定精度はそれぞれ84~100%及び45~100%であったが、提案手法による推定値の推定精度は94~100%であり、本手法により継続的に高精度な草高推定を行えることが示された。

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