システム農学
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技術論文
UAVによる葉いもち被害度の評価と殺菌剤要否判断の実証試験
小林 隆佐々木 崇上野 清菅原 隆介鈴木 寛人仙台 慎一郎田邊 大白土 宏之片平 光彦長谷 修
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キーワード: イネいもち病, 殺菌剤, GI, 水稲, UAV
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2023 年 38 巻 3 号 p. 45-56

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抄録

葉いもちの発生した圃場をUAV(Unmanned Aerial Vehicle)で計測して、葉いもち被害度とGI(Greenness Index: 緑色域と赤色域の比演算値G/R比)の関係について調査した。GIと葉いもち被害度の間には有意な相関があり、GIが大きくなるほど葉いもち被害度が小さくなったことから、GIにより葉いもち被害度を評価できることが明らかとなった。次に、GI画像により、圃場における葉いもち被害度の発生分布を解析した。GI画像により圃場内の葉いもち被害度の分布を可視化できることが明らかとなった。これらの関係を用いて葉いもちの被害度を評価し、殺菌剤散布の要否判断を行うことで慣行防除栽培に比べて減農薬栽培が可能となるか現地実証試験を行った。慣行防除区では、地域の慣行防除体系である育苗箱施用剤による葉いもち予防防除と出穂期の茎葉散布剤による穂いもち防除の2回防除とした。一方、実証区では育苗箱施用剤による葉いもち防除をしないで、圃場内で葉いもちが少発生したときに茎葉散布剤を散布する防除体系とした。4年間の試験で、イネ体のいもち病に対する感受性が十分低く、適期に防除が実施できた場合、0~1回防除の実証区は2回防除の慣行防除区と収量に有意差はなく、減農薬栽培でも一定の防除効果があったと考えられた。山形県庄内地方では、育苗箱施用剤は一定の効果があり必要ではあるが、イネがいもち病菌に対して感受性が低い場合や気象条件によっては育苗箱施用剤の省略が可能である。

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