システム農学
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農村地域における有機物フローシステムの現存量とフロー量の推定法
松本 成夫三輪 睿太郎袴田 共之
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1990 年 6 巻 2 号 p. 11-23

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抄録

農村地域において有機物資源を有効利用し、富栄養化などの環境汚染を軽減するためには生物生産に起因する有機物の管理方策を確立することが重要である。そのためには、有機物フローの実態を把握する必要がある。著者らは農村地域における有機物フローシステムを明らかにし、現存量とフロー量を推定する手法を提案した。農村地域における有機物フローシステムは「農作物主産物」「農作物副産物」「食生活」「畜産」「耕地」「環境」「購入食飼敷料」「出荷農畜産物」の8つのコンパートメントから構成されており、それぞれの現存量および相互間のフロー量を主として官庁統計から、補助的には研究文献資料から次の通り求める。農作物主産物と農作物副産物の生産量および食生活と畜産の有機物消費量と生産量は統計資料を用いて求める。食生活、畜産、耕地については現存量を求める。食生活と畜産の消費量より農作物主産物と農作物副産物の自給量および食飼敷料の購入量を求める。畜産および農作物主産物の出荷量を求める。食生活と畜産から出る廃棄物の一部は耕地へ投入され、残りは利用されずに廃棄される。農作物副産物も同様に一部が耕地に還元され、残りが廃棄される。耕地に還元されない有機物が廃棄される場を総称して環境とする。耕地に還元された有機物は分解され、炭素は土壌呼吸により大気中に放出され、窒素などは無機化される。この分解量は岩元・三輪の有機物分解モデルを用いて推定する。本手法を1985年時点の茨城県牛久沼集水域に応用した結果、有機物フローの実態が明らかになり、有機物管理の方向を鮮明にすることができた。本手法は基本的に官庁統計を使用しており、比較的客観的に、また経年的に有機物フロー量を求めることができるため、農村地域の有機物管理方策を検討する際に有効である。

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© 1990 システム農学会
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