The Journal of JASTRO
Online ISSN : 1881-9885
Print ISSN : 1040-9564
ISSN-L : 1881-9885
ORIGINAL CONTRIBUTION
下咽頭癌に対する化学療法同時併用重粒子線治療 ―preliminary report―
柳 剛恩田 健志別所 央城高木 亮長谷川 安都佐溝江 純悦花澤 豊行岡本 美孝辻井 博彦
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 19 巻 4 号 p. 297-302

詳細
抄録
下咽頭癌の放射線治療成績は,多分割照射法などの照射方法の発達や化学療法の併用によって,従来の成績と比較して格段に改善している.しかしながら,治療強度の増強に伴って,急性粘膜炎などの正常組織の早期反応の増加や,嚥下困難などの遅発性反応の遷延など,さらに改善すべき点も残されている.そこで今回われわれは,喉頭を温存しつつ,生存率を改善することを目標に,化学療法を同時併用する重粒子線治療を試みている.第 I/II相試験が開始されたばかりであり,結論には至っていないが,現時点での中間報告を行う.  重粒子線治療は全頸部への予防照射と原発巣および転移リンパ節へのブースト照射からなる第 I/II相試験で,開始線量は57.6GyE/16回/4 週間(1 回3.6GyE)とする.シスプラチン30mg/m2を週 1 回同時併用し,治療は 4 週間で終了する.  2004年 9 月から2006年 8 月までの間に 7 例が登録された.症例内訳は,stage IIIが 5 例,stage IVが 2 例であった.投与線量については57.6GyE/16回/4 週間(1 回3.6GyE)で 3 例施行し,その後60.8GyE/16回/4 週間(1 回3.8GyE)に増量して 4 例施行した.経過観察期間は7.8~26.5カ月(中央値10.4カ月)であった.治療は全例で完遂できた.早期反応は皮膚,粘膜とも,重篤なものは認めなかった.遅発性反応は,1 例で喉頭にRTOG / EORTCのGrade 3(severe edema)を認めた.局所効果については,1 例で局所再発を認めたが,救済手術によって現在無病生存中である.  下咽頭扁平上皮癌に対する化学療法併用重粒子線治療の中間報告を行った.今後も慎重に症例を集積したい.
著者関連情報
© 2007 日本放射線腫瘍学会
前の記事 次の記事
feedback
Top