抄録
【目的】国立療養所西群馬病院における限局型小細胞性肺癌の治療成績をretrospectiveに検討し, 日本の中規模病院で限局型小細胞癌の標準的治療を施行する際の問題点を提示する.
【対象と方法】1984年10月から2000年10月までに49例が限周型小細胞性肺癌と診断された, 内訳は男性39例, 女性10例, 年齢ば舞46歳から87歳 (平均66歳) で, 75歳以上が8例 (16%) であった. 全身状態は良好な患者が多く, PS: 0~1の患者が41例 (84%) を占めたが, 残りの8例 (16%) はPS: 2~3であった. すべての患者に化学放射線療法を施行した. 放射線油療は2Gy/frの通常分割照射を原則としたが, 5例に15Gy億の多分割照射を施行した. 総線量は平均48Gy (30Gy~60Gy) であった. 化学療法薬剤は多岐にわたるが, 1980年代後期から白金製剤を基本とした多剤併用療法が中心で, 49例中41例に施行された. 化学療法と放射線療法を同時併用した症例が21例, 継続併用した症例が28例であった.
【結果】生存期問中央値は22ケ月であった, 2, 5年生存率はそれぞれ45%, 18%で, 2, 5年原病生存率が51%, 20%であった, 2, 5年無病生存率は23%, 15%で, 再発は確認できた46例のうち37例 (80%) に認めた. 初回再発部位としては照射野内再発のみが26%と最も多く, 脳転移が15%であった. 胸郭内再発と遠隔転移を同時に認めた症例が39%を占めていた. 再発例のうち92%は治療後20ヶ月以内に出現し, 最も遅く再発した症例は治療後48ヶ月であった. 5年生存例は6例 (12%) で, 有意な予後因子はPSのみであった.
【まとめ】国立西群馬病院における限局型小細胞性肺癌の治療成績は他の報告と比して比較的良好であった. 現在, 全身状態良好な限局型小細胞性肺癌の最適な治療法は照射法として加速多分割照射を用い, 全身化学療法と同時併用する化学放射線療法と言われている. ただし当院のような日本の中規模病院で治療される患者群には予後不良な因子を持った患者の割合が高くなるため, 良好な背景を持った患者を対象とした無作為比較試験から得られた知見を適応する場合には注意が必要である.