抄録
射線治療後, 骨萎縮による不全骨折や骨壊死が時に見られるが, 照射の早期の骨の変化に関する報告はほとんどない.本研究では, 放射線治療中の胸椎の骨塩量の経時的変化をDual Energy X-ray Absorptiometry (DXA) を用いて検討した.まず, 胸椎の骨塩定量の再現性を確認するためにファントム実験により胸椎骨塩定量の変動係数 (CV%) を求めた.CV%は0.13~0.59%であり, 良好な再現性が得られた.臨床的検討として, 対象は放射線治療を受け, 照射野内に胸椎が存在した悪性腫瘍74例 (肺癌55例, 食道癌12例, 悪性リンパ腫7例).年齢は52から79歳で平均60.8±11.5歳.胸椎に明らかな骨粗霧症や骨転移を認めないものを対象とし, 胸骨を含めた値を胸椎骨塩量として検討した.また, 31例は照射前と後の血清中のIyrHを測定した.照射野外にある第12胸椎の骨塩量は, 照射により有意な変動を示さなかった.照射野内の胸椎の骨塩量は, 照射すると漸減し始め, 50Gy照射終了時には, 照射前の89.6±7.8%まで低下し, 60Gy時点で照射前の87.1±4.5%まで低下していた.照射前と比べて, 照射後のPTHはわずかに増加していた (P<0.05).