The Journal of JASTRO
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筑波大学における陽子線治療の初期治療成績
辻 比呂志辻井 博彦奥村 敏之千葉 俊也丸橋 晃早川 吉則高田 義久多田 順一郎福本 貞義立崎 英夫大原 潔稲田 哲雄秋根 康之北川 俊夫板井 悠二
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1995 年 7 巻 4 号 p. 303-313

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抄録
陽子線による優れた線量分布は, 周囲: 正常組織への線量を低減させつつ腫瘍に高い線量を照射することを可能とする.筑波大学陽子線医学利用研究センターでは深部腫瘍を中心とする各種悪性腫瘍を対象に, 陽子線の有効性に関する臨床試験を行ってきた.治療患者数は444症例に達し, 内367例は根治照射例であった.症例数は年々増加の傾向を示し, その内訳は経過とともに変化していた. 例えば原発性肝癌, 膀胱癌の症例数は顕著な増加を示し, 食道癌, 肺癌の症例数はほぼ一定で, 一手宮癌, 脳悪性神経膠腫の症例数は最近減少の傾向を示していた.治療結果として, 多くの部位で良好な局所制御率, 生存率が得られていた.原発性肝癌の局所制御率, 5年累積生存率は各々90%, 41%であった.食道癌では81%, 49%, 非小細胞肺癌では90%, 20%, 膀胱癌では78%, 67%であった.さらに障害発生の頻度は全体で6%と低率であった.これらの治療成績は, 陽子線治療が深部悪性腫瘍, 特に原発性肝癌, 食道癌, 非小細胞肺癌, 膀胱癌などに対しても有用な治療法となりうることを示している.
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© 1994 The Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
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