2012 年 20 巻 p. 3-13
本稿は、企業家活動の視点から地域イノベーションとしてのクラスターの形成・展開について検討することを目的としている。まず、多様な企業家活動の概念を再検討し、相互に関連づけ、それを踏まえて地域やコミュニティ再生の鍵とされている地域イノベーションの議論を検討する。伝統的企業家活動研究においてはほとんど議論されることなく軽視されてきた新結合の一つである組織の創造が、社会企業家や市民企業家という新しい企業家活動の議論のなかでプラットフォームという形で取り上げられ、分析されていることを指摘する。そして、企業家活動を新企業や新事業創造の企業家活動(企業家活動Ⅰ)とプラットフォーム(企業家プラットフォーム)創造の企業家活動(企業家活動Ⅱ)の2つのタイプに分けることによって、2種類の企業家活動のダイナミックな相互作用と連鎖(企業家活動のミクロ-メゾループ)を通じて、地域イノベーションとしてのクラスターの形成・展開を統一的に分析できることを示す。