日本ベンチャー学会誌
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寄稿論文
研究論文
  • 堤 英貴, 小関 珠音
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 経営学
    2023 年 41 巻 p. 11-26
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    アントレプレナー・エコシステム(以下、EE)は、いかにして形成されるのか。EEの先行研究ではアクターとファクターの観測が主眼であったが、近年ではコンテクストに関する研究蓄積が厚みを増している。Autio et al.(2014)によって、コンテクストの研究動向は、6種類(地理的、制度・政策的、社会的、組織的、産業・技術的、時間的)に整理されたが、2019年には27本の論文が発表されるなど、ここ数年でさらにコンテクストとEE形成の関係性の研究に発展がみられる。本研究は、2001年から2020年までの国際的に質の確保された80本の査読論文を抽出し、現象分析を行い、年ごとの論文発表数、論文の発表分野、掲載されたジャーナルなどから研究の傾向を把握した。次に主題分析により、EEに関連する先行研究をレビューし、(1)各種コンテクストにおいて先行研究でどのような内容が議論されているのか、(2)どのように様々なコンテクストがEE形成に影響を与えているか研究傾向を明らかにした。分析の結果、EEを適切にデザインするためには対象となる地域の地理的コンテクストと共に、時間的コンテクストに十分な配慮を行う必要があることが明らかとなった。時間の経緯の中では、その他の要素である組織的、産業・技術的、制度・政策的および社会的コンテクストも、適切に組み込まれる必要がある。ただし、各コンテクストに関する議論が活発化しているものの、それらを統合する試みは見られない。Autio et al.(2014)が提示した、EEの形成の三段階、すなわち①コンテクストが相互作用してEEを形成する、②形成されたEE内にてアントレプルヌアル(起業家的)・イノベーション(以下、EI)が発生する、③発生したEIが地域発展に繋がるという3つの因果関係のうち、①の段階に焦点を当てて分析を行った。2014年以降の先行研究においては、これに関連する論点が多面的に提示されていることが明らかであるが、今後は、コンテクストとEEの相互作用の実態をより深堀した研究の蓄積により、EEの発展、EIの創出に貢献することが期待される。
  • 池内 泰大
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 経営学
    2023 年 41 巻 p. 27-41
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    アントレプレナーシップ研究は起業家個人の特性の探究から起業活動を取り巻く社会的・地理的文脈の探究へとシフトしてきた。その流れの中で、Entrepreneurial Ecosystems(以下、EEとする)という概念が研究・政策・実務の側面で、ますます注目を浴びるようになっている。しかしながら、その注目度とは裏腹に、EE概念の理論的基盤は十分に整備されていないことが指摘されている。それゆえに実証研究においても適切なEE概念の使用がなされていないケースが散見されるとの指摘もある。そこで、本稿ではEE概念を理論的に扱った文献を中心として統合的な文献レビュー(Integrative Literature Review)を実施し、理論の要件に従ってEE概念の理論的記述および境界条件の抽出・統合を行った。それにより、EE概念を批判的に検討し、EEの今後の研究指針を示した。
事例研究論文
  • ―準抽象化理論における経験の役割―
    坂井 貴之, 井上 達彦
    原稿種別: 事例研究論文
    専門分野: 経営学
    2023 年 41 巻 p. 43-58
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    近年注目されているビジネスモデル創造の手法の一つにアナロジー(類推)がある。本研究では、アナロジーを用いてビジネスモデルを構築した起業家の事例について、認知心理学の研究を援用しつつ、アナロジーにおけるベースの特性の影響を明らかにする。直接経験によって、深く理解した知識を参照して、新たなビジネスモデルを創造した起業家と、間接経験によって、さまざまな知識を幅広く参照して、新たなビジネスモデル創造を行なった起業家とを比較対照し、直接経験によって得られた知識が、多面的な理解を促し、アナロジープロセスの効率性に影響を与えることを明らかにした。
  • 山本 聡
    原稿種別: 事例研究論文
    専門分野: 経営学
    2023 年 41 巻 p. 59-71
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    近年、コーポレート・アントレプレナーシップ研究では、従業員の個人的企業家志向性(IEO)とその決定要因の議論が始まっている。そこでは「従業員の自己IEOの評価」が測定され、被説明変数として、分析されることが多い。しかし、組織におけるヒトの思考・意思決定や行動を考えると、「自己がどれくらいIEOを有しているか」という自己IEOの評価だけを測定することは妥当なのだろうか。本研究では社会比較理論を鑑み、自己と他者IEO の評価の差という変数を提示する。その上で、日本企業A社の営業系社員へのWEBアンケートと人事考課の評価点数などの人事データを接続した実証分析から、自己IEOの評価とIEO評価の差の二つの決定要因を比較した。そして、①職務自律性が高まると、自己IEOの評価が高まる、②職務多様性が高まると、IEO評価の差は大きくなる、③過去の人事考課の評価点数が高く、認知できれば、自己IEOの評価は高くIEO評価の差は大きくなる、と示した。加えて、「自己IEOの評価とIEO評価の差の決定要因は幾つかの点で異なる」ことなどを示唆した。
  • ―英国への「甲州」の輸出事例を通して―
    塩崎 裕務
    原稿種別: 事例研究論文
    専門分野: 経営学
    2023 年 41 巻 p. 73-87
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル フリー
    本稿は、企業家的志向性(Entrepreneurial Orientation: EO)を構成する2つのサブ概念である企業家のリスク姿勢および企業家的行動の相互関係、とくに企業家のリスク姿勢が企業家的行動に結びつく過程の解明を試みた探索的な事例研究である。研究対象は、山梨県の勝沼地域のワイナリーが、同地域における固有のブドウである甲州を国際ブドウ・ワイン機構にワイン用ブドウとして品種登録し、独自のラベルを冠したワインの英国輸出を実現した事例である。事例研究を通して次の2つの分析結果を得た。第1に、企業家のリスク姿勢が自社とプラットフォームでの活動を経て、企業家的行動に結び付く。第2に、自社内の取り組みに対する関係者からの評価と反応が、企業家のリスク姿勢に影響を与える。以上の分析結果は、産地における企業家的志向性の姿勢的側面と行動的側面とが結び付く過程は、地域内外の関係者たちとの相互作用が新たに生み出されるダイナミックなプロセスであることを示唆している。
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