抄録
世界各国で、資格枠組み(各資格のレベルを比較する物差し)策定が進んでいる。資格枠組みは、能力評価の社会的認定を促進し、労働市場、教育訓練機関のそれぞれの内部、交互そして各国間での移動促進、教育・訓練の活性化などにつながることが期待されており、主要国で策定に取り組んでいないのは、今や米国と日本だけになっている。日本では職業別労働市場の育成が欧米諸国に比べ弱く、労働市場、教育・訓練をまたがる資格枠組みの策定には大きなエネルギーが必要となろう。しかし、若者、女性、中高年、障害者の能力開発、グローバル化ヘの対応など日本における人材育成上の多くの課題の解決に資するものであり、JQF(国がインフラとして策定する日本版資格枠組み)の策定がもたらす効果は他国以上に大きい。ここでは、「資格枠組み」とは何かを欧州の状況を中心に説明し、日本での資格枠組みの前段的試みを紹介した後、日本版資格枠組み策定の意義を論ずる。