抄録
本稿は、テレワークを活用しているNPO法人を研究対象として、自由裁量的で非報酬であるが有効性の向上をもたらす行動である組織市民行動の事例研究を行う。そのために、まず、組織市民行動の先行研究をレビューし、市民の知覚という概念を導出する。次に、テレワークの定義と類型とを整理することで、テレワークがITの利活用と非対面の状況とを前提にしているという特徴を示す。以上をふまえて、分析単位を設定する。考察から得られた示唆は、次のとおりである。第1に、組織市民行動は、ITの導入それ自体では生起せず、ITの利活用という実践から生まれた市民の知覚によって生起するということである、第2に、組織市民行動は、構成員間で有効的であると認識されることによって公式に制度化されるということである。