企業のグローバル化・巨大化やITの進展等により,企業のビジネス・リスクである経営上の課題は複雑化・多様化している。財務諸表監査の有効性は,財務諸表における重要な虚偽表示を看過しないことであり,重要な虚偽表示をもたらす要因となる被監査会社のビジネス・リスクを適切に識別し評価することが重要となる。
このための制度的な対応として,有価証券報告書等における開示の充実や監査基準・監査基準委員会報告書の改訂が継続的に行われている。また,日本公認会計士協会や監査法人においては,ITやAI,データ分析等の高度のテクノロジーや専門家の知見等を活用することによって監査の有効性を高める試みも行われている。一方,こうした取組みを進めるにあたって,データの標準化,新たなスキルや人材の育成,新たな監査技法を監査基準においてどう位置付けるかなどの課題もみえてきている。