現代監査
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  • ―報酬依存度規制からの考察―
    牟禮 恵美子
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 2023 巻 33 号 p. 100-111
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/10/21
    ジャーナル フリー

    IESBAの倫理規程の改正を受けた日本の倫理規則の改正では,報酬依存度が15%を超える状況が継続した場合,監査契約を辞任しなければならないという厳しい規定がおかれることとなった。日本の監査市場においては,中小監査法人が存在感を増している状況にあるが,この規制強化は直接的に中小監査法人に大きな影響を及ぼすことが想定される。本稿では,当該規制が中小監査法人へ及ぼす直接的な影響と,そこから派生して生じる可能性のある監査品質上の問題点について考察する。

  • 実務家の視点から
    結城 秀彦
    2023 年 2023 巻 33 号 p. 11-20
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    我が国においては,デジタイゼーション及びデジタライゼーション等,DX(デジタルトランスフォーメーション)化に向けたさまざまな過程にある企業があり,その個々の監査業務ごとに監査人の監査のDXの状況も異なる。

    DX化は,利用する媒体及び経路の電子化及び情報の転用可能性等の向上を伴い,作業と判断が分離され,処理の自動化,機械化・標準化,段取化,集中化,遠隔化,即達化が図られる。これらの特徴を有するDXが進展することで,監査技法の変化(処理の自動化,機械化)に伴う監査資源(時間・人員)の費消の在り方の変化や監査の人材リテラシーにも影響を及ぼす。また,監査アプローチに関して,監査証拠の電子化によるリスク対応手続の在り方や監査意見表明の基礎形成のための注意水準に影響を及ぼす可能性がある。さらに,監査技法のDX化は監査人の行動様式や監査事務所のガバナンスに影響を及ぼす可能性があり,また,関連規制等,監査の実施環境にも影響を及ぼすことが想定される。

  • 公認会計士の立場から
    小暮 和敏
    2023 年 2023 巻 33 号 p. 64-73
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    日本公認会計士協会の自主規制の取組みに支えられて,公認会計士への信頼が維持され,さらには公認会計士の活動領域の拡大につながっている。「監査に関する品質管理基準」の改訂,「倫理規則」の改正,協会が運用している上場会社監査事務所登録制度を前提として,公認会計士法において上場会社等監査人名簿への登録制が導入される等,自主規制の流れに大きな変化が生じている。自主規制で不十分なところがあれば,公的規制が補完する局面があるかもしれないが,我々公認会計士の活動については,基本的には自主規制でカバーすべきであるし,実効性・有用性の観点では,自主規制の充実を優先すべきである。ただし,規制以前に,全ての公認会計士の活動への信頼のベースとなる職業倫理が重要であり,不確実性の時代においても公認会計士業務における普遍的な概念と思われる『信頼』,さらにそのベースとなる職業倫理を基礎に,今後の環境変化に柔軟に対応していく自主規制が期待される。

  • 小俣 光文
    2023 年 2023 巻 33 号 p. 57-63
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー
  • 松尾 慎太郎
    2023 年 2023 巻 33 号 p. 112-124
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    本稿は,「通常とは異なる監査意見等」の記載内容として要請されている「十分かつ適切な説明」や「特に丁寧な説明」が,監査実務において,どのような記載を意味していると理解され,どのような対応がなされているのだろうか,という問題意識のもと,Toulminモデルによる分析調査を通じ,「通常とは異なる監査意見等」の記載内容についての課題を明らかにすることを目的としている。分析調査の結果,範囲限定の場合に,「監査規範(裏づけB)」についての記載が観察されなかったことから,実施できなかったとされる監査手続について,なぜ,監査人が当該手続を計画したのか,そして,当初計画していた手続の代替的な手続としてどのようなものを検討したのかについての記載がなされていないということが明らかとなった。この点については,範囲限定ひいては意見不表明に至った経緯の「特に丁寧な説明」を検討する上で,重要な課題であると考える。

  • 弥永 真生
    2023 年 2023 巻 33 号 p. 36-46
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    監査のDX化は,被監査会社における会計のDX化を論理的前提とするが,監査のDX化はリアルタイム監査・継続的監査を可能とするかもしれず,その場合には,金融商品取引法上の規制の在り方に大きな影響を与えるかもしれない。また,リアルタイム監査等が可能となる前の段階においても,監査のDX化の下では,――紙ベースの調書についても十分な規律が加えられていないのかもしれないが――監査調書の改ざん防止・保存がより重要な法的課題となる。また,監査人の責任を合理的な範囲に限定するために,免責条項および責任制限条項ならびに補償契約を活用する必要が高まるかもしれない。さらに,AIを活用する場合には,機械学習のため,監査の過程で得た情報の利用のために,被監査会社の許諾を得る必要がありうるなどの課題も存在する。以上に加えて,監査のDX化は「一般に公正妥当と認められる監査に関する慣行」を変化させることになりうる。

  • 組織体の目標達成に役立つための評価範囲の考察
    蓮沼 利建
    2023 年 2023 巻 33 号 p. 125-135
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    内部監査が組織体の目標達成に役立っているのかを客観的に評価し,改善を提言することが外部評価の目的であり,内部監査部門がガバナンス上の課題などを,取締役会や最高経営者に提言すること,および取締役会が内部監査部門の報告や活動が組織体の目標と一致しているかどうかを監視すること,に対する評価が外部評価として重要である。

    そこで,本稿は,内部監査の品質評価における外部評価の範囲が狭すぎるのではないか,外部評価の範囲をどう考えるべきかという問題意識をもち,外部評価の範囲を明確にすることを研究目的とした。

    結論として,現状の「IIAフレームワーク」での外部評価の評価範囲に,内部監査部門からの取締役会への報告とそれに対する取締役会の監視のプロセスに関する評価,および内部監査部門から取締役会や最高経営者への提言のプロセスに関する評価も加え,外部評価は,これらを含む「内部監査プロセス」の評価とすべきである。

  • 阻害要因と促進要因の探索的調査
    髙田 知実
    2023 年 2023 巻 33 号 p. 21-36
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    監査業務におけるテクノロジーの活用により,監査の効率性と有効性の向上が期待されている。

    大手監査法人を中心にテクノロジーに対する投資額は近年拡大し,実際,監査実務において,さまざまな目的でテクノロジーが活用されていることは,監査法人等からの開示情報等からも明らかである。しかし,監査業界全体におけるテクノロジー活用の実態は,ほとんど知られていない。

    本研究は,残高確認手続におけるテクノロジー活用の実態を探索的に調査し,その阻害要因と促進要因を検討する。本研究の発見事項は,テクノロジーの活用が進展している監査実務の現状に関する理解を促進し,制度設計等に活かされることが期待される。

  • 監査報告事例からの接近
    林 隆敏
    2023 年 2023 巻 33 号 p. 47-56
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    財務的影響を伴う気候関連リスクが監査報告に及ぼす影響を明らかにするために,関連する監査報告規定を確認した上で,イギリスの監査報告事例を調査した。イギリスでは,財務諸表監査における気候関連リスクの検討は例外的なものではなく,一般的な監査上の留意事項になっている(または,なりつつある)。一方,日本では類似の監査報告事例は少なく,監査実務における気候変動リスクへの対応はこれから急速に浸透するものと思われる。気候関連リスクが財務諸表監査に及ぼす影響は,実質的には監査意見形成(監査証拠の収集と評価)に関わる課題と捉えられるが,将来生じうる監査報告上の課題として,その他の記載内容に対する保証業務を財務諸表の監査人が実施する場合の監査報告の在り方を指摘できる。

  • 過剰な規制とその帰結
    福川 裕徳
    2023 年 2023 巻 33 号 p. 87-99
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    今日,会計プロフェッションを巡る規制が過剰になっているのではないかとの指摘がみられる。

    本稿では,過去約20年間にわたって,会計プロフェッションを巡る規制がどのように,どの程度強化されているのかを,外部規制と自主規制の両面から明らかにする。特に,監査実務指針と倫理規則の分量の時系列的な変化をみることで,一貫して規制が強化される流れにあることを示す。

    さらに,そうした規制の強化がどのような弊害をもたらしうるのかを論じるとともに,特に優秀な人材の確保という問題に焦点を当て,公認会計士試験受験者の動向および(大手)監査法人所属率等のデータから,会計プロフェッションが優秀な人材を惹きつけられなくなっている可能性があることを示す。最後に,会計プロフェッションを巡る規制を対象とする研究の課題を,データの入手可能性,規制のコスト・ベネフィットの範囲と測定,関連する他の要因のコントロールの観点から検討する。

  • 島 信夫
    2023 年 2023 巻 33 号 p. 74-86
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    昭和23年に公認会計士法が成立して以来,令和4年の法改正まで16度の国会が開かれた。公認会計士監査の保証機能は公益性に資するが,その法的基礎づけは国会が担う。しかし会計プロフェッションと行政による規制,監視および監督は重視されるが,国会の役割への関心は低い。国会抜きに監査の機能,責務,義務や規制・監督の法定化は成しえないだけに,これは問題である。

    そこで昭和23年の公認会計士法成立,その後の法改正を指導する立法の論理を明らかにするのが本稿の主題である。昭和23年の法案の提案趣旨に含まれる立法の論理は,その後の審議の先導役を果たしている。そして監査実務の現状や動向である監査環境,従前の規制に立法の論理が適用されて,新たな規制を含む監査の枠組みが形成されていく。その意味で,立法の成果である公認会計士法の変遷は,戦後の公認会計士監査が担う公益性の担い手の責務の表れである。

  • 堀古 秀徳
    2023 年 2023 巻 33 号 p. 138-147
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー
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