抄録
膀胱鏡検査において腫瘤性病変が認められたイヌ36例の観察所見に関する検討を実施した。移行上皮癌の多くは不規則な凹凸や大小様々な腫瘤を形成する広基性病変が観察され、イソギンチャクやイクラ状の病変が観察されるものもあった。その他の病変も例数が少ないもののそれぞれに特徴的所見が認められた。隆起性病変を認めた34例に関してヒトの膀胱癌取扱い規約を基にした病変の分類を実施したところ、移行上皮癌は乳頭型広基性病変の割合が顕著に高く、移行上皮癌とその他の病変で分類される型が異なる傾向が認められた。以上より膀胱鏡観察所見からある程度は病変の鑑別が可能であることが示唆された。また、観察所見による病変の分類はヒトと同じ条件で良いかどうかは検討が必要であるが、今後臨床データを調査する際に活用する価値はあると思われた。