抄録
1995年11月から1996年4月にかけて,狭山丘陵の比較的面積の大きな樹林地と2つの孤立樹林地(鳩峰公園・八国山緑地)において,鳥類標識調査を行った.その結果,合計376羽を捕獲し,環境庁の番号入り金属足環と捕獲地点を示す色足環1個を装着した.コゲラ,ヒヨドリ,ルリビタキ,シロハラ,ウグイス,ヤマガラ,シジュウカラ,メジロ,アオジは15個体以上捕獲された.比較的大規模な樹林地では,シロハラ,ヤマガラ,メジロが孤立樹林地よりも多く捕獲され,シジュウカラとアオジは孤立樹林地の方が捕獲数が多かった.1日あたりの捕獲数は1月に最も多かった.これは,この時期に越冬していた個体数が多かったためか,狭山丘陵の樹林地の管理されていない場所で低木層に一般的にみられるヒサカキの果実が,多くの鳥類のこの時期の主要な食物となっているためであると考えられる.
長距離の移動(300m以上)はヤマガラとエナガで数例確認された.特に,エナガ1羽は孤立樹林地からもう一方の孤立樹林地への移動が確認された.
標識された376羽のうち60羽が同じ捕獲地点で再捕獲された.再捕獲率が高かった種は,ウグイス,シロハラ,ルリビタキで,これらはすべて主に低木層を利用する種である.一方で,捕獲数が多かったにもかかわらず,シジュウカラとメジロの再捕獲率は低かった.この結果から,越冬期においてはウグイス,シロハラ,ルリビタキは,限られた場所に定着しており,シジュウカラとメジロは樹林地内を移動していると考えられる.