スズメ目鳥類の越冬地への回帰について5越冬期にわたり標識調査により調べた.調査地は三重県中部の河岸林に囲まれ,灌木の混じる草地,葦原および裸地の河川敷であった.調査した種はアオジ,メジロ,ホオジロ,カシラダカ,ウグイス,エナガであった.全期間を通したリターンとしての再捕獲率(回帰再捕獲率)はウグイスとアオジでそれぞれ0.37および0.26と高く,一方エナガ,メジロ,ホオジロ,およびカシラダカは0.14以下であった.ウグイス回帰再捕獲率とエナガ,カシラダカ,メジロ,ホオジロ,のそれとの間には有意な差が見られた.アオジの回帰再捕獲率はカシラダカ,メジロのそれより有意に高かった.さらに調査地内のどこで再捕獲されたかを詳しく知るため,調査地を3つのサブサイトに区分し,捕獲されたサブサイトを個体ごとに記録した.アオジとウグイスは同一サブサイトへ正確に回帰する傾向が強く,カシラダカでは低かった.アオジやウグイスは茂みの中で越冬期を過ごす.一方カシラダカ,ホオジロは開けた草地で,また,エナガ,メジロは樹冠内で過ごす.越冬期の行動,生息環境の差が,越冬地への回帰する率に反映されると推定される.