抄録
鳥類への負担が最小限となるような雌雄の判別方法を確立するため,日本産鳥類11目42種の糞からDNAを抽出し,雌雄の判別を試みた.標的遺伝子として,性判別で有効であると報告されているspindlin,EE0.6,CHD領域を用いて,種ごとにプライマー等の条件を変えてpolymerase chain reaction (PCR)を行った.結果として,一部には増幅が確認できない種や検体が見受けられたものの,10目36種で雌雄に特異的な遺伝子領域の増幅が確認された.増幅が確認できなかった検体に関しては,性判別にもちいる糞を,抽出操作の前で十分に選定する作業が求められる.増幅が確認された検体の内,その内9種においては検体数と増幅した割合から,性判別に本研究の方法が実用的であることが判断できた.幼鳥から採取した糞からも性判別が可能であることからも,鳥類への負担が従来の方法と比較して少ないだけでなく,より判別可能条件が広い方法であることが示唆された.